2009年
『エスカレーション』 人影のないプラットホームではトンボ1匹が死んでいた。磔にされた神さまのように見えた。 普段よりも短い電車が緩々とスピードを落としていく。焦らすようにじりじりと、停まる。開いた扉へ、飛び込む。 入って直ぐの座席に座り、鉄の…
『エスカレート』 人の姿はない。きっと、おれ以外の全てが死に絶えてしまったのだろう。 駅には白熱灯が冷たく灯っている。 体が重い。溜まっているものが乳酸なのか疲労なのか鬱屈なのかわからないが、おれの体には何か、異物が入り込んでいて、重いのだ。…