地獄の回想録

2006年からやっているブログの記事を機械的に貼り付けました。

2018-04-17から1日間の記事一覧

2011/02/04 10:17

『一生』 「お寒うございますね」 男は俺の直ぐ左側に居た。左側に立たれるというのは何となくいい心地がしなかったが、俺はちゃんとその見知らぬ男の呟きに答えてやる。「そうですね」 ちらりと横目で見ても、やはり俺はその男に見覚えがなかった。黒の色褪…

2010/12/22 11:58

『慶長5ch 秋の特番「激突!関ヶ原の戦い実況中継」』 関ヶ原の戦いとは 慶長5年(1600年)、美濃関ヶ原を戦場に起こった戦いをいう。徳川家康率いる江戸方、(総大将じゃない)石田三成率いる大坂方が10万の大軍で戦ったのに、1日で終わった。江戸幕府が開…

2009/08/24 15:12

『エスカレーション』 人影のないプラットホームではトンボ1匹が死んでいた。磔にされた神さまのように見えた。 普段よりも短い電車が緩々とスピードを落としていく。焦らすようにじりじりと、停まる。開いた扉へ、飛び込む。 入って直ぐの座席に座り、鉄の…

2009/08/24 13:53

『エスカレート』 人の姿はない。きっと、おれ以外の全てが死に絶えてしまったのだろう。 駅には白熱灯が冷たく灯っている。 体が重い。溜まっているものが乳酸なのか疲労なのか鬱屈なのかわからないが、おれの体には何か、異物が入り込んでいて、重いのだ。…

2008/06/30 17:32

『僕らと宇宙人』 「本当に来るの?」 不満げに石灰を撒く僕を見て、彼はにっこりと笑った。「当たり前だろう。本に書いてあった」 彼の顔は既に真っ白で、闇に紛れるような黒いTシャツもみすぼらしくなっている。 僕は額に流れる汗を両手で拭う。歌舞伎役…

2008/04/03 23:40

『熱帯夜』 お前は正しいことをしていると思い込んでいるんだよ。 友人の言葉に私は強く反論した。俺の何が間違っているんだとか、そういう素直な言葉を選んだと思う。 友人は子供のような私に向かって、何と言ったのだろうか。そうかい、と呆れて笑っていた…