地獄の回想録

2006年からやっているブログの記事を機械的に貼り付けました。

2007年

2007/12/13 19:50

『ある屋上の感情』 さようならと、誰に言いたいのかぴんとこなかった。 高校の時に熱心に就職の世話をしてくれた先生も、悩みや愚痴を一身に受けてくれた大酒飲みの友人も、何かが違う気がしたのだ。親や彼女に言うのも野暮ったいものだ。 元から居なかった…

2007/12/13 19:45

『何てったって』 「雅美?芳田だよ。うん、久し振り。何?撮影中?知ってるよそんなこと。俺スタジオの前に居るんだから。さりげなく下りて来れないかな。理由?いや、ちょっと話せないかな、と思ってさ。撮影中なら、もうメイクも済んだよな?無理?いや、…

2007/12/12 18:42

『サッカー部員連続殺人事件』 上野「何でもここのサッカー部の顧問は、部員殺しと言われてるらしい」 下山「それくらい練習がきついんだろう」 上野「でも俺ずっとサッカーやりたかったから、サッカー部入るよ」 下山「小学校の頃ユニフォームで登校してた…

2007/11/06 19:51

目が覚めると、私はテレビを見ていた。おや、と思うよりも早く、立ち上がる。―ここは何処だ?磨かれたフローリング、箱型のテレビ、大きなオーディオに周りを取り囲むスピーカー。他には何処にでもありそうな家具や日用品が揃っている。しかしどれも安くはな…

2007/11/06 19:44

『My island』 気付いた時には、口中は砂だらけだった。しわしわになって無数の細かい傷が付いた手を握り締めると、やっと自分が生きているという実感が湧いて、途端に眠気が襲ってきた。 島 ぬるまったい風が乾かした白衣は、質が格段に落ちた気がする。生…

2007/11/05 19:45

『雨天決行』 毎度断りを入れるようでなんですがこれはギャグです。 坂本雅は刑事をしていた。捜査一課に配属されて数年になるが、未だに捜査の後は食べ物が喉を通らなかった。後輩の逸馬は、最近結婚して毎日手作りの弁当を持ってきて美味そうに食べる。雅…

2007/11/05 19:23

『避暑地の夜中』 ギャグです。「雨天決行」の前の話という扱いです。 とあるペンションで深夜、拳銃を使った殺人事件が起きた。殺されたのは男で、3階建ての山荘の、窓を望む外側に倒れていた。頭を一発。弾はぎりぎりの所で頭に残っていた。拳銃は発見さ…

2007/09/26 13:02

『間に合わず 中秋の名月』 兄がクエートに取材に行ってから数日が経った。帰るやいなや国際電話を試みる父。無理だと言っても聞く耳を持たない。兄の無事を祈り毎日仏壇に手を合わせている母。仏壇は死者にお願いをするものなのだろうか。祖母は痴呆てしま…

2007/09/24 00:05

『山風』 相模秀一はまずいスープを飲み干すと、小さな窓を見上げた。世間では秋。今年も姉は秋物のコートを欲しがっているのだろうか。 『吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ』 相模は、不意に百人一首の句を思い出した。勿論作者は…

2007/09/14 23:35

『ヘッドスタート』 【初日】 探偵小説を鞄にしまい、探偵事務所の窓を見上げたのは、既に1時間前。「‥‥あかない」そう呟いたのも、またその時。私が予約したのは1時間前の筈で、こんなことなら会社を早退しなくてもよかったのだ。帰ろうか、と思うも、早…

2007/08/31 20:18

『絶望は目先にある』 やけに冷たい、強い風が吹いた。僕のシャツははたはたとなびき、僕は寒さに身を震わせる。辺りはもう、漆黒の闇だった。見下げれば、黒い川に灯篭でも流しているように、いくつもの丸い光が直進している。向かう先はあの世か。いや、光…

2007/08/01 23:35

『火焼けの季節』 あまりにも鬱蒼とした庭から光を取り入れるために借金をして太陽を借りました。一月で、これは季節などによる時価となるのですが、梅雨なのでまだ少し安く借りることが出来ました。太陽光と梅雨の雨を浴びて、庭の雑草は更にめきめきと成長…

2007/07/31 23:12

『少なくとも鮎の塩焼きではある。』 私はこの部屋を、実験室と呼んでいる。薬品の臭いとかはない。ただ白く、気が狂ってしまいそうな狭い部屋だ。噛んでも噛んでも味がない。剥いても剥いても中身がない。そんな部屋だ。 「やあ」 私の声に、男は顔を上げた…

2007/07/25 12:33

『不自由』 もうブランコで立ち漕ぎが出来ないほど身体が成長してしまった。嬉しくはなかった。

2007/06/30 13:15

『私はそこで、』 私はそこで、短剣を構えながら息を思い切り吸い込んだ。心臓は競うように速くなる。こんな調子では階段上の男を殺すのなんて、とても敵わないことに感じる。 階段を、一歩一歩踏み締めながら上っていく。果てしなく長い。 男が背を向けたの…

2007/06/06 12:47

『金遣い』 ホームから伸びる上り階段を見上げて、眩暈を起こした。最近疲れている。立ちくらみも酷けりゃ、頭痛もする。 疲れている、だけではないんだろうな。 キヨスクで、リポビタンDを買った。150円だから、残金1570円。 給料日までラストワン…

2007/06/04 21:33

『ある葬式の帰り道』 横に並んで私を見つめているのは、小さな双子の女の子だった。 そっくりの顔をして、そっくりの姿勢で立ち、そっくりの視線を私に向けている。 「お姉ちゃん」 どちらかが、喋った。 「お姉ちゃんはどうして怒ってるの」 誰に話し掛け…

2007/04/29 20:0

『小さく訂正・彼の動機 家鳴』 始めに鳴ったのは、電子ジャーだった。 成程、蓋のそれなんて目覚まし時計のようじゃないか? 僕は五歳だったが、突然鳴りだした電子ジャーが、米の入った目覚まし時計だとは思えなかった。ただ、うるさくて堪らない。耳を塞…

2007/04/29 19:55

『TAXI』 夜のタクシー業は、ちょっとした恐怖を伴う。 幽霊とか、馬鹿げたものじゃないぞ。酔っ払いだ。 車内で吐かれて、オヤジのゲロを処分して、それでも微かにつん、とくる臭いとストレスの中で街を走らなければならないのだ。 だから、俺としてはまる…

2007/04/03 20:46

『覚醒への夢』 二次創作だけど見つけたから上げます。 これが僕の求めていた世界ならば― 地に着いた両手に絡み付くように花が咲き乱れている。丸く開いた花弁からは甘ったるい匂いが漂う。 いや、この香りは花ではなくこの世界自体が持つものなのかも知れぬ…

2007/03/29 22:50

『適当ってこういう文章のことを言うのだ』 クイーンの推理小説を読みながら、耳に入ってくるのは家電量販店のテレビから流れるクイーンの曲。 シュールだなあ、と思う。 「ちょいと、お兄さん」 足元の方で、声が掛かった。怪しい橙色の燕尾服を着た、オー…

2007/03/29 22:43

『調教師の異常な愛情』 「ラストを飾るのは、猛獣使いのダリアとライオンのヴァジルです!」 団長の声。 彼女は歓声を浴びながら、大きな首輪を付けた雄ライオンを引いて登場した。 「やっぱりだ」 私は呟く。 奴ら、本当にペッパーを殺しやがったんだ。ダ…

2007/03/16 00:23

『ノアの方舟』 途中です。多分続きません。 参加者(予定) 50音順 ・ 公山 佳奈美 様 ・ 公山 優 様 ・ 駒村 友朗 様 ・ 珠ヶ崎 朝香 様 ・ 春野 健悟 様 ・ 翠川 征子 様 皆様のお越しをお待ちしております。 野吾 博人 ・ 葵 『Noah's Ark』 「・・・…

2007/02/20 20:29

『単発 奇妙な日常4』 ・試食会 荒島は、料理が嫌いではなかった。好き、と言えるくらいだろう。 しかし最近、新しいメニューを作り上げようとしている荒島に、妻は頭を痛めていた。 「何か足りないな」 そうぼやいてから、少し考え込んで、 「そうだ、辛味…

2007/02/20 20:25

『単発 奇妙な日常3』 ・目的 荒島の母が死んだ。 老衰だった。だから荒島は、悲しいというよりも、労いの気持ちで見送ることが出来た。 この前里帰りした時には、変わらない笑顔で迎えてくれた。老衰というのは、急なことだ。 荒島は、子供の頃を回想してし…

2007/02/20 20:08

『単発 奇妙な日常2』 ・トラブル 喫茶店の前の植え込みで、小さな犬が震えていた。見れば木の根元に、しっかりとリードが括り付けられている。 「可哀想だなあ」 荒島は、独り言を言いながら、犬の愛らしさに、笑みを漏らした。 「悪いかね」 喫茶店から客…

2007/02/20 20:07

『単発 奇妙な日常1』 ・花粉症 荒島肇は、二度のくしゃみに、年令を感じずにはいられなかった。 今年は暖冬だという。社内では、花粉症で目を真っ赤にした人間が、多くある。それは辛そうに、マスクをしながらもくしゃみをし続けている。 荒島に今、花粉症…

2007/01/25 17:02

『夢』 中途半端に眠ったせいで、怠くてかなわない。 生きた豚がいぶられてゆく夢を見た。 豚の姿が、段々あなたに変わってゆく。 あなたはお高い桜の木のチップの中で、悶えることなく死んだ。 そんな夢を見たから、余計。 助けて、とも言わず、あなたはい…

2007/01/21 11:51

『会話文の可能性』 「ぼふぅっ!」 「ちょ、ちょっと麻美!何吹いてんのよ!」 「あーごめんごめん。みほっちのギャグがあまりにも」 「待ってよ。私ギャグなんて言ってないし」 「いや、言ったじゃん。あたしが吹く前に」 「そうなの?書いてないからわか…

2007/01/17 17:35

『この二の舞がすごい! 創刊』 「この」と「二の」の字が似ていて読みにくい、という意見も編集部内で起こりましたが、無事発刊されました。 一般人から「すごい二の舞エピソード」を募集し、最も凄い二の舞に「この二の舞がすごい!大賞」を送ります。 「…