2006/07/27 00:44
『後に延ばせない須西家・決断の時』
母の肩を揉んで
たるんだ皮膚とか、開いた毛穴とか見て背筋の震える真夜中。
話すことなんて、ただエクセルのテンプレートのはなし。
「詳しいね」
「そこまでじゃないよ」
母は、この黒ずんだ皮膚が見えているのだろうか。
親指で肉に触れる度に、何本ものシワを作るこの背中が見えているのだろうか。
「介護は政樹が?」
「透でしょ?長男だから」
母と、叔母の声だ。
「マサが良いわあ」
「何で?」
「良い子で、面倒見いいし」
「透ちゃんはよ」
「あれは女に騙されて借金作る、親不孝者」
「やっぱ僕かあ」
「何が?」
「兄さんの印象悪いからさ、僕が母さんの介護だよ、きっと」
「おう、そうなの?」
「うん。叔母さんと話しててさ」
「断れば?」
「だって、自分の母親を見捨てられるか?」
そんなうっすい感情で、母に接してるのかなあ。
僕は、そんな貧しいレンズを通して母を見ているのかなあ。
年負う母が哀れで、恐ろしくて、
それでも、嫌いだったかなあ。
小さくなる母の背中を見ると、頭を柱にも垂れる自分に強い苛立ちを覚えていた。