2006/11/26 15:44
『鬼って人格持ってるんだよね』
↓行方不明
「うちの子供を、知りませんか」
血相を変えた女性が、息を切らして聞いた。
↓むかしむかし
「大きな桃が流れてきましてね」
老女は、二コリと笑う。
「食べる気か。正気か」
↓新聞記者
あばら家は、風を受けてぎしぎし唸ってる。
今時全木造住宅なんて、こんな田舎にしかないわ。
この中では、老婦人が(今時よ?)飢えで死んでいた。
取材なんて、誰にするべきなのよ。周りに人なんて居ないじゃない。
甘い香りのする、ハートの形の葉が付いた木が庭になっていた。
「何の木かしら」
「桃ですよ」
何処からか、少年の声がした。
振り返ると、お多福顔をした10歳くらいの男の子が立っていた。
「あら、そうなの?貴方、この辺に住んでるの?」
少年は、微笑みながら頷く。
こんな小さな子に取材?ま、今の子ってこういう時は気持ち悪いほどしっかりしてる。
テレビのインタビューだって、皆が皆読書感想文の手本みたいなことばっかり言う。
「あら、そうなの?じゃあ聞きたいんだけど、
ここに住んでたおばあちゃん達の事、知ってる?」
また頷く。
「どんな人達だった?」
「最低だよ」
↓狂気
「こ・・・・これを食う、気か」
血塗れの出刃包丁を手から滑らせて、老女は息を漏らした。
「他に何か、食べるものがあって?」
↓ここ掘れ
「・・・・え。いや、どういう風に最低だったのかな」
少年は、桃の木の横に座った。
「掘り返してみてよ、ここ」
根元を指して、言う。
どういうこと?私だけで簡単に掘れたらいいけど、無理。
「記事を書くのに悩んでるんでしょ?なら、掘って。大スクープになる」
老婦人の家に掛かっていたくわを使って、悪いと思いながらも根を切った。
「あった」
額からぼたぼたと汗を流す私に、少年が言った。
それは、白い塊だった。
「そ・・・・それは?」
「骨」
すう、とその体は消えた。
「どういう・・・・事?」
↓桃太郎さん 鬼の正体は化け物だった?
「綺麗な花が咲きましたね」
どうしてあそこに桃がなる?
「お前は・・・・本当にあの子を、食べたのか。埋めたのか」
「実がなれば、また美味しくいただけますね。オジイサン」