2006/09/28 13:55
『無題』
「失敗を求めるなんて、ねえ、変かな」
帰ってきた貴方は、貴方の皮を被ったロボットなのではないでしょうか。
時々凄く不安になるのです。
下手過ぎて、私が代わりにやっていたシャツのアイロン掛けは、
まるでクリーニングに出したみたいにきっちりと仕上げ、
かちゃかちゃと食器を鳴らしながらしていた食事も、ファミレスであろうがかつやであろうが
高級レストランにいるかのように、貴方は食べました。
「吉牛でも行こっか」
「今は牛丼売ってないぞ」
「最近冷たいわよね」
「そう?」
「器用になったし」
彼は、照れ臭そうに答えました。
「向こうに居る間、君に迷惑を掛けないために練習したんだよ」
「そう‥‥なの?」
彼は、にこりと笑います。
屈託のない眩しい笑顔。
時々凄く不安になるのです。
彼は、あんなに嘘が上手だったかな?
「ね」
「何」
「たまには高いとこ行こう」
「珍し。金でも入ったのか?」
「ううん」
貴方がいつ私を置いて行ってしまうか-
不安になるのです。