2007/02/20 20:07
『単発 奇妙な日常1』
・花粉症
荒島肇は、二度のくしゃみに、年令を感じずにはいられなかった。
今年は暖冬だという。
社内では、花粉症で目を真っ赤にした人間が、多くある。
それは辛そうに、マスクをしながらもくしゃみをし続けている。
荒島に今、花粉症の症状は出ていない。
それは一昨年からのことで、酷かった花粉症が治ったのだから、
妻に昨日、報告した。嬉しかったのだ。
元来、花粉症持ちでない妻は、夕食の干物の骨を抜きながら言った。
「年を取ると免疫力が衰えて、出なくなるらしいけどね」
「じゃあ、俺は」
「あっははは、もうお爺さん」
その時は笑う余裕があったのだが、翌々考えると、
悲しいことだと気付いた。
今の荒島のくしゃみは、久しぶりの寒さによるものである。
不意に、他愛もない会話を思い出したのは、荒島自身もわからない。