地獄の回想録

2006年からやっているブログの記事を機械的に貼り付けました。

2007/03/29 22:43

『調教師の異常な愛情』

 


「ラストを飾るのは、猛獣使いのダリアとライオンのヴァジルです!」

 

団長の声。

彼女は歓声を浴びながら、大きな首輪を付けた雄ライオンを引いて登場した。

「やっぱりだ」

私は呟く。

奴ら、本当にペッパーを殺しやがったんだ。
ダリアの、昔の相棒。

私の唯一の、息子のようなもの。それくらい愛せたのは、あの子だけ。
ダリアに一度歯を剥いたからって、殺された。


ダリアとヴァジルが、檻の中に入った。
このサーカスのオオトリ。檻の中でダリアはヴァジルの首輪を外し、ひとりと
一匹で芸をしていく。

 

私は調教師。
ヴァジルにこっそりと仕込んだのは、人を襲う合図。
ヒントをくれたのは、自らの悪ふざけでペッパーに噛まれたという、ダリアから。


大きな、それでも周囲の客は気付きもしない口笛。

 

歓声が悲鳴に変わる。
遠隔殺人というやつか。

気持ちのいいものだ。

 


私は血の溢れるステージを見下ろしながら、いつまでも哄笑していた。