地獄の回想録

2006年からやっているブログの記事を機械的に貼り付けました。

2006/01/25 17:26

『完全犯罪』

 

カレンダーに赤い丸、明日私は出掛けるのです。
これは、一種の完全犯罪。法に触れず、そして
手を汚さずに、私は殺人を犯してみせるのです。

長かった。辛かった。
子供に当たった事も多かった。
子供には体罰こそ裁きだと教えた。
親は神だと、全てだと、教えた。
私は彼にとっての唯一の親。

「父さんは、私たちを捨てた犯罪者よ」

神を捨てるのは、とても簡単なんです。
信仰を止めてしまえば良い。信じなければ良い。
神は、人間あっての神だもの。

「裁きを、待たなければ」

その日、私は夫に会った。
いつもの通りで。

さあ、裁きを。

「死んで貰わねえと、困るんだよ」

私の首に、夫の手が回される。
殺される。
海が、真横でうなっている。
そうか、逃れるには。

二人はそのまま、海にダイブしました。
髪の光沢が鮮明に見えるほど、その動きはゆっくりでした。

す、と夫の手が私の首から離れた。
ごぼりと口から泡を吐く。
これで、目標達成。


海面に立つ気泡。打つ波。
両親は海で、心中、という事になります。そして、
私はひとり、遺された可哀想な一人息子。でも
何処かで幸せに暮らすんです、これからは。
通報なんかしませんからね、貴方達は行方不明となる。

カレンダーの丸、これは両親の命日で、及び、裁きの日。
お解りですか?お母様。
虐待は犯罪でしょう。だったら、貴女の言う裁きは必要な筈ですが。
私は、そんなに馬鹿じゃないんだよ。

「残念でしたね」

さあ、記念すべきこの日に乾杯を。
この花束は、感謝を込めて。
ずっと言いたかったんだ。
馬鹿に生まれてくれて有難う。我が親愛なる神よ。