地獄の回想録

2006年からやっているブログの記事を機械的に貼り付けました。

2006/09/13 05:36

『スタンディング』

 

二十歳になると、成人するっていうでしょう。人に成る訳です。

つまり未成年わね、人じゃないのですよ。

じゃあ何なのかって?ええ。


私は、ボルゾイという種類の犬でしてね。

運が良いのですよ?犬なんて。
同胞の北原さんなんか、キリンだったらしいですからね。
家に入れず庭で過ごした青春だ、と笑って話してくれました。

逆に小さ過ぎたり、偏食家だったり、人と生活して苦労のある動物の多い中で、
犬として生まれてこれた私はもうエリート街道の門番が土下座しながら
迎え入れてるようなもんです。
酷な話ですがね、生まれた時からもう人生に差がついてんです。

解ります?通学出来ないのも出てくるんですよ。

象なんて。もう道幅足らん足らん。
人間を基準に作っちゃうから困るのに。

首相だって元ライオンだったそうですよ?

もー肉食獣はね、やばいすよ。
私もね、一回ひどい目にあった事がある。聞いてくれます?

幼なじみでね、山鹿さんってとこの虎だったんですよ。
小さい時は、私があれ、大型犬だったから。
だから遊び合ってたんですけど、虎なんてはやばいです。

間近で見た事あります?でかいったらない。
じゃれてたらね、かぷっとやられて。こう、右前足を。

死ぬかと思いましたよ。だってぶっとい牙がぐさぁって。
あれ。もうほんっとわんわん鳴きましてね。どっちのなくだって話ですけどね。

はは。笑い事じゃない。

今でもほら、肘の上に傷が残ってるんですよ。

私も8年前やっと成人しまして。

ハリネズミの社長がイラついて、叫び倒しちゃったんです。

だからもう、親にも見離されて、今はこの始末です。

気楽なもんですよ?動物期の種の差もない。

あ、酒もう一本頼みます?何だか私ばっかり飲んでは喋り。

 

 

それでは、またご縁があれば。

え?私の名前ですか?

甘木コロ、と言います。