地獄の回想録

2006年からやっているブログの記事を機械的に貼り付けました。

2006/09/13 23:10

『もうろくの理髪師』

 

随分髪が伸びたから、床屋に行ったんです。
ボロっちい床屋でね、窓から見るとお爺さんが一人だけ。
そのドアノブに手を掛けて、引いたんです。
そしたら、ドアノブが急に水の中に落とされたみたいに、潔くばっさり取れた。
それと同時にドアが外れて、要を失ったみたいに、ボロ屋はガラガラ崩れた。
焦りましたよ。私が壊してしまったんですから。
私は、必死でお爺さんを呼んだ。生き埋めでしょうからね。
でも、お爺さんは見付からなかった。
私が警察に事情を話すと、そこは何年も前に地震で崩れた床屋だ、と言うんですよ。
店主の老人も、その後直ぐ亡くなり―と。

私が体験したのは霊現象だったのでしょうか?
首を傾げながら家に帰って、驚いたのはそれからです。
私は、すっきりと髪を切られていたのですから。

でも、スポーツ刈りは切り過ぎかなあ、お爺ちゃん。