地獄の回想録

2006年からやっているブログの記事を機械的に貼り付けました。

2017-12-22から1日間の記事一覧

2007/02/20 20:07

『単発 奇妙な日常1』 ・花粉症 荒島肇は、二度のくしゃみに、年令を感じずにはいられなかった。 今年は暖冬だという。社内では、花粉症で目を真っ赤にした人間が、多くある。それは辛そうに、マスクをしながらもくしゃみをし続けている。 荒島に今、花粉症…

2007/01/25 17:02

『夢』 中途半端に眠ったせいで、怠くてかなわない。 生きた豚がいぶられてゆく夢を見た。 豚の姿が、段々あなたに変わってゆく。 あなたはお高い桜の木のチップの中で、悶えることなく死んだ。 そんな夢を見たから、余計。 助けて、とも言わず、あなたはい…

2007/01/21 11:51

『会話文の可能性』 「ぼふぅっ!」 「ちょ、ちょっと麻美!何吹いてんのよ!」 「あーごめんごめん。みほっちのギャグがあまりにも」 「待ってよ。私ギャグなんて言ってないし」 「いや、言ったじゃん。あたしが吹く前に」 「そうなの?書いてないからわか…

2007/01/17 17:35

『この二の舞がすごい! 創刊』 「この」と「二の」の字が似ていて読みにくい、という意見も編集部内で起こりましたが、無事発刊されました。 一般人から「すごい二の舞エピソード」を募集し、最も凄い二の舞に「この二の舞がすごい!大賞」を送ります。 「…

2007/01/17 17:31

『司法観覧』 高山正選(たかやま まさすぐ)は、全身が運動の後のように濡れていることに気付いた。突然浮かんだアイディアに、恍惚を覚えているのである。 彼の持つ勇気や好奇心、つまり行動に繋がるものなんてほんのかけらほどだ。しかし、彼は自身の生涯…

2007/01/12 22:43

『高度ボケテクニック特集』 「時差ボケ」 日常の会話から、突然ボケをし始めること。しかし、中々相手が乗ってきてくれず、ツッコミはあまり期待できず、会話のテンポがずれる。 また、「時差ツッコミ」というツッコミ技法もあり、ボケから数秒遅れてツッコ…

2007/01/07 11:30

『駄 名前と熱川バナナワニ園』 駅前の街中だというのに、どうしてここはまるで場末のように、静まり返っているのだろう。 一人飲み明かした私は、終電の無くなった町をひとり歩いていた。独身というのはこういう時楽だが、やはり淋しいという気持ちは強くな…

2006/12/14 06:22

『出世人』 いくら偉くなっても、私の出世欲が満たされる事はなかった。 小学校の時から毎年学級委員長を務め、中学校、高校では生徒会長をやった。大学は希望よりも2ランク落としたが、中々名の知れたところに行き、卒業後は親の意に反して中企業に就職。…

2006/11/28 21:35

『崩れ始めた破壊』 八尾沢は悩んでいた。それは、自分の書き進めていく小説が、次第に赤く染まっていくことであった。原稿に書き込まれた、己の赤ペンによる文字のせいである。 パソコンを使わない八尾沢は、毎回手書きの原稿だ。担当に訂正を求められた箇…

2006/11/27 18:29

『美しい破壊』 彼の名前は、矢尾沢 久男。年齢は40になる。職業は小説家。時には中々右上がりの売れ行きを見せる事もある、名の知れた作家だ。 彼の作品の一番の特徴は、細やかだがスピード感を失わない「破壊」の表現と、その際の登場人物のリアルな感情…

2006/11/26 15:44

『鬼って人格持ってるんだよね』 ↓行方不明 「うちの子供を、知りませんか」 血相を変えた女性が、息を切らして聞いた。 ↓むかしむかし 「大きな桃が流れてきましてね」 老女は、二コリと笑う。 「食べる気か。正気か」 ↓新聞記者 あばら家は、風を受けてぎ…

2006/09/28 13:55

『無題』 「失敗を求めるなんて、ねえ、変かな」 帰ってきた貴方は、貴方の皮を被ったロボットなのではないでしょうか。時々凄く不安になるのです。 下手過ぎて、私が代わりにやっていたシャツのアイロン掛けは、まるでクリーニングに出したみたいにきっちり…

2006/09/15 19:04

『発展した町を作ろう』 帰宅ラッシュの電車を降りたのは何時間前の事だったろう、と思う。たった数分前の事だったのだけれど。この町まで来ると降りる人は少なくなる。 空を見る。冬のこの時間だというのに空はまだ透けたような青だ。広い。何処までも広い…

2006/09/15 19:02

『美しい町を目指して』 帰宅ラッシュの電車を降りたのは何時間前の事だったろう、と思う。たった数分前の事だったのだけれど。この町まで来ると降りる人は少なくなる。 駅のホームに降り立つ。すっかり寒くなった空気が私の息を白く染めた。ぽつりぽつりと…

2006/09/14 21:47

『まるでそれは幻影のような』 日が傾いてきた頃、僕はゴールデンレトリーバーのロンを散歩に連れていく。コンクリートが熱くないか手で確認して、いつものルートを歩いた。帰り、夕日と川を背に受けて後数メートルで家、という時。 頭の上で、カラスが鳴い…

2006/09/13 23:10

『もうろくの理髪師』 随分髪が伸びたから、床屋に行ったんです。ボロっちい床屋でね、窓から見るとお爺さんが一人だけ。そのドアノブに手を掛けて、引いたんです。そしたら、ドアノブが急に水の中に落とされたみたいに、潔くばっさり取れた。それと同時にド…

2006/09/13 22:50

『僕だけの自転軸』 さっき知ったのだが、世界は僕を中心に自転しているらしい。僕が歩くたびに自転軸がずれるのだから、迷惑な話だ。僕が地球の裏に行ったら、地球は逆回転してしまうのだろう。地球は、僕が支配しているようなものだ。 地球の裏側―僕の真下…

2006/09/13 05:36

『スタンディング』 二十歳になると、成人するっていうでしょう。人に成る訳です。 つまり未成年わね、人じゃないのですよ。 じゃあ何なのかって?ええ。 私は、ボルゾイという種類の犬でしてね。 運が良いのですよ?犬なんて。同胞の北原さんなんか、キリン…

2006/09/10 22:33

『薔薇』 背の高い椅子に、私と彼女は向き合って座った。買った時は彼女と「低すぎるかな」と言い合ったテーブルも、今では良い買い物をした、と思っている。熱いコーヒーにクリームを入れながら、大きなマグカップを揺らすと、中で白と暗褐色が混ざり合って…

2006/09/10 22:30

『蓮』 ぷかぷか ぷかぷか 波はない。ただ、浮いているだけ。 ぷかぷか と。 風にそよぐ 緑の葉。 私は今まで、この植物が花を咲かせたところを見た事がない。世間では有名な花なのだが、実際に見た事はないのだ。 名を、蓮という。 多年草なので、私は毎年…

2006/08/31 20:48

『彼の動機 家鳴』 始めに鳴ったのは、電子ジャーだった。成程、蓋のそれなんて目覚まし時計の様じゃないか?僕は五歳だったが、突然鳴りだした電子ジャーが、米の入った目覚まし時計だとは思えなかった。幼稚園の友達は、その話に興味を示さなかった。そり…

2006/08/11 07:32

『詩』 世間という共同体はただ後ろ指を指しながら「同じ」様に見せ付けられた感覚を喜び美しいドレスを纏ったシンデレラは呪いの詞を吐き永遠と誓った愛を嘲笑い踏み付けて一進一退に変化する己の醜い脳みその考えをただ見つめるだけの自分が居て自分が被害…

2006/07/27 00:44

『後に延ばせない須西家・決断の時』 母の肩を揉んでたるんだ皮膚とか、開いた毛穴とか見て背筋の震える真夜中。話すことなんて、ただエクセルのテンプレートのはなし。 「詳しいね」「そこまでじゃないよ」 母は、この黒ずんだ皮膚が見えているのだろうか。…

2006/07/22 22:39

『ナイフの行く先』 狼は何処に行った?本当に来たのか? それなら、狼は誰なんだ? こうじはいつもおとなしい奴だった。小さい頃から良く遊んでいた記憶があるけど、それは親同士で話している事が多かったから、その間に暇を潰していたのだと思う。やんちゃ…

2006/07/10 20:34

『楽園の存在 3』 彼の最後の残業から、もう1ヶ月が経った。今年は梅雨でも雨が少なく、いつの間にか夏になっていた。さすがに私でも毛布を投げ捨てて、白のワンピース1枚でベッドに転がっている。窓が無いから、風が無くて暑い。蒸し器の中のサツマイモ…

2006/07/10 19:52

『粉々の楽園 2』 生徒の減少が原因だった。仲の良い3人組の女学生達と、初老の夫婦が一気に教室を辞めたおかげで、教室長は閉めざるを得なくなった。 僕がいつもの服装で出勤した時に、教室長はぽつんと教室の真ん中に立ちすくんでいた。室内の空気は、普…

2006/07/09 23:03

『粉々の楽園 1』 世界が荒れて、彼女は壊れた。外に出るのが怖くなり、車のエンジン音を聞くだけでびくびくしてた。「大丈夫」「助けて」そんな会話が続いた。 僕らが生まれる前、某大国が戦争を起こし、各国が巻き込まれた。そのせいで上手く巻き込まれな…

2006/06/27 22:50

『楽園の存在 2』 あの日から、具合が悪くてまいる。1日中機能を失ったスプリングの入ったマットレスのベッドに転がって、暗闇に目を這わせる。でも何が出てくるワケでもなく、何処かの国のぽっかりと浮かんだ船が描かれた大きなキャンバスと、ホコリっぽ…

2006/06/26 23:32

『楽園の存在 1』 目を覚ますといつも真っ暗で、手探りでデスクライトの明かりをつけた。窓が無いから勿論カーテンなんかも無くて、パジャマ姿でカーテンを巻いてフランス窓みたいな窓を開けて、鳥の声を聞くことも出来ない。今防備も無くそんな事をしたら…

2006/02/25 00:09

『無題』 満天の星空、君は空を見ながら微笑んでる。長い睫毛が美しくて、僕は見ることすらもおぞましい行為に感じて、空を見た。星が、気持ち悪いくらいに綺麗だった。 「ねえ、アノ星」 君が言った。 「どれ?」「ほら、あの1番輝いてる星」 小さな星達の…